それも依頼型の導入を取るとどうにも切れの悪いオープニングとなることがしばしばあります。
荒くれ者が管を巻いている酒場……最近は女の子ばかりなので甘味屋に商売替えした店もあるそうだが、そこにわけあり顔の男が1人入り込んでくる。男は君たちは冒険者かねと尋ねてきて、村はずれにゴブリンの巣が出来て困っている。報酬はこれだけ払うから退治してくれんかと頼む。
ところが、誰も引き受けてくれない。
ある者は「あんたはベストを要求しているんだから、もっと見合った報酬をくれ」と言い出す。ある者は「そんな仕事は性に合わない」と言い出す。プレイヤーの本音を言えば、「次のレベルアップに達するまでには報酬が足りん」、「キャラクター設定だから」「ここでGMに揺さぶりをかけてシナリオ展開を有利に…」だとという目論みがある。
それ以前に、連帯感なくバラバラの状態では、音頭を取って団体行動を取りましょうなんていうコーラー役がいない。皆が他者に遠慮して中々話が進まない。
もちろん、GM困り果てる。
ゴネるのもロールプレイだと思い込んでいるプレイヤーたちには十分プレイ中だけど、GMは依頼に乗ってくれないとプレイが始まらないとセッション崩壊の危機に強迫観念のノルアドレナリンを大放出。
GMを手玉に取ることがどれだけたやすいことかを実証することになる。
実際にはこれにロールプレイや設定で色づけされていて、臨場感は多少はあるんだろうけど、「依頼人が現れて仕事を持ちかける」というのが基本的なスタンス。だけど引き受けるべき状況に持ち込むまでの難しさが、依頼型を切れの悪い導入にしています。
だから依頼型よりも巻き込み型の導入の方になびくのは仕方がないことで、F.E.A.R社のゲームによって考案されたハンドアウト……コネクションを明記したしっくりくる巻き込み型導入法によって、巻き込み型は今では「やりやすい」導入となっています。
このままでは、依頼型の導入は未熟なGMの取るダメな手法とされるかもしれません。
熟練GMの場合、導入だけを何パターンか用意して同じシナリオに当たらせるとかテクニックを駆使してなんとか凌いでいるようですけど、問題はプレイヤーの士気が低い場合には何をやってもモチベーションが上がらないということです。
今日はSeeSaa移転後初のTRPG雑記ということで、僕が使用した依頼型導入の小技を開陳しましょう。ただ、言っておきますけどこういう小技は自分のゲーム環境で仕立て直して使ってこそ華です。
【技その1】
仲介者NPCを用意する
PCと依頼人を仲介する常駐NPCを用意します。
冒険者ギルドがあるゲーム(『アルシャード』のノルンとか)ならギルドメンバー、『トーキョーN◎VA』ならクロマク、連帯感の薄いサイバーパンク物でもバーテンダーとかフィクサーとかがその役に当てはまるでしょう。
とにかく、そのNPCは「PCの実力をよく知っている」「依頼人の素性に詳しい」「広いネットワークを持っている」人物です。
仲介者NPCの役目は、契約を明瞭にすることです。
PCに対しては依頼人の素性を明かし、報酬を値踏みさせる判断材料を与えます。「この依頼人はいくらまで出す」という目算をインプットしない限り、日々の生活のことなんかロールプレイせんでも良いと考える能天気なPC衆は考えなしに提示された報酬にゴネ続けます。
逆に依頼人……PCへの抑制に関しては「お前たちにはこの仕事が妥当だ」ということを警告する目的があります。
仲介者の仲立ちで依頼を「契約」とすることにより、プレイヤーに「依頼を放棄したら悪評が飛ぶ」ということを認識させるのが全体的な目的です。もちろん、仲介料は報酬とは別箇にしないと、PCたちは仲介者のマージンを怨みます。ささいな額でも。
【技その2】
嘲笑者NPCを用意する
嘲笑者NPCとは、PCたちをヒヨッ子だと侮っている同業者NPC集団です。
こいつらの目的は、PCたちを反発させ奮起させることにあります。
PCたちが仕事に乗り気なら割って入って「ちょいと待ちな。こんなガキどもに任せたらあんた損するぜ」と介入します。乗り気でないなら、酒場のカウンター席から「おいおい。ここにゴブリン退治もできないヒヨっ子がいるぜ」と煽ります。どっちにしろ、酒場には嘲笑者の取り巻きがいて、一斉にPCたちを嘲笑します。
それでも依頼を断るPCたちがいるようなら、後日酒場には嘲笑者たちが冒険成功を祝してのパーティをやってる最中にします。座の中心には「あんなゴブリンども、チョロいもんだったよ」と武勇談をする嘲笑者の姿が……。プレイヤーたちに、自分たちの取った行動が「不名誉で惨めな選択」であったと思わせるのです。
そこでヘコんだり、喧嘩したりしたPCたちに仲介者NPCが「名誉挽回の機会があるんだが」と改めて依頼人を紹介します。
それで、首尾よく依頼をこなした場合、報酬以外のロールプレイ上でのボーナスをも嘲笑者は与えることができます。
首尾よく冒険を成功させ、酒場に戻ると周囲の空気はガラリと変わる。
今まで嘲笑者になびいていた酒場女が男性PCに擦り寄ってきたり、嘲笑者の取り巻きが鞍替えして「今日は俺たちにおごらせてください」とやってきたりする。あるいは嘲笑者が態度を変えて敬意を表したりして、PCたちを祝福したりする。
こういう風に、いい仕事した良かった良かったという実益だけではなく、ゲーム世界でも自分たちがリスペクトされたという満足感を与えると、プレイヤーの依頼型に対する期待感はより一層強くなります。
……とまぁ、以上の通り小技には違いないが、こういうちょっとした技法を駆使することによって、プレイヤーにゲーム世界への連帯感、共有感を持ってもらうのがTRPGにおける「技」であると考えています。






