2008年07月13日

ミニチュアウォーゲームからTRPGになるまでの間にあったゲーム要素の転換

 よく「次回」などと銘打ちながらテーマを続けないことがあります。
 それは単純に反応が鈍かった記事でして、アクセス数が伸びなかったり、はてなブックマークがつかなかったりして、あまり食いつきが良くなかった記事はテーマとして打ち切りにしています。
 食いつきが悪いテーマを根気よく続けるのは時局を読めないわけですし、そういう記事は公表するよりも下書き段階で暖めた方がよい。むしろ今スラスラ書ける話題に転換した方が硬直せずに続けられるというのが僕の姿勢です。

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 TRPGはミニチュアウォーゲーム(略:MWG)の派生として生まれたことは本Blogで何度か取り上げました。MWGに興じていたG・ガイギャックスらのグループが、それまでユニット(軍団)を率いていたMWGを1人1キャラにしてはどうかと思いつき、そこから試行錯誤を経て『D&D』の前身である『Chain Mail』が誕生しました。
 そして『D&D』からモンスター側と審判の役割が統合されたDMという遊び手が発明され、1人1キャラ担当のプレイヤー数人対モンスター集団を1人で扱うDM1人という図式になりました。

 これがMWGからTRPGが派生した「神話」なのですけど、この派生に至るまでに、どのようにゲームが改造され、コンセプトが設計され直されたのか詳細な記録は残されていません。
 今回は、MWGからTRPGに移行するまでの間にどのような変化があったのかを推察してみようかと思います。

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 MWGはSLGであり、その基本はチェスと同じ陣取りゲームです。
 陣取りゲームは各駒の性能を活かし、行動範囲が決められた盤面上で交互に駒を動かし、最後は陣取りを制して相手を詰みにすることを目的としたゲームです。MWGは駒がユニット、盤面がジオラマや六角マスのボードに変化しただけです。

 さて、チェスやMWGは共通の特性が1つあります。それは最終的な勝利のために、駒を生かす必要がないということです。陣を確保するために捨石になる駒、役目を終え盤を埋めるのみの駒など、駒は活かされるのみならず、殺されるためにも使われるということです。
 これは遊び手に、最終的な勝利のためにどう駒を使い、なおかつどう駒を捨てるかという視点を与えます。陣取りゲームの遊び手は犠牲を厭わないのです。

 これが1人1キャラになると、駒の死=ゲームオーバーですから駒を殺して陣を取る意義がなくなります。各個が自駒の保全を目的に動くので、プレイヤー側には陣取りの勝利という巨視的な見方をする人がいなくなりました。
 陣取りに勝つために、自分がゲームから脱落することを納得させるのは中々難しいことですし、それを他者に強要することはもっと難しいことです。

 この時点で、各個が自駒の生存のために動くプレイヤー側と、モンスターを活かすことも殺すことも自在なDM側とで遊び手の立場が異なるようになり、ともするとDM側の方が有利な環境になりました。
 駒を捨てられないプレイヤー側と、全体的勝利のために捨て駒を使えるDM側の方が手堅く陣を取れるでしょうから。
 この絶対的な戦力の不均衡を是正するために、後にTRPGの方向性を決定付ける観念が導入されることになったのです。

 それが、「無制限に使える防御判定」です。

 防御判定に成功する限り、無制限に駒を保全することが可能ですし、無数の敵にも対応できます。HPにも駒の耐久性を上げる効果はあるにせよ、無制限に駒を保全できる可能性を与えたのは画期的な観念と云えるでしょう。
 
 そしてさらにPCの生存率が高まるように、食らったダメージの総数を軽減できる装甲によるアーマー・クラス(AC)という要素も発明されました。これも無制限です。

 防御判定とACによって生存率が大幅に上がったプレイヤー側は、モンスター側との戦力差を埋めるべく従来の陣取りゲームでは想定外の戦法を取り始めました。プレイヤー側が集結し、DM側のモンスターを1匹ずつ各個撃退し始めたのです。陣取りをするために犠牲を強いることを辞め、とにかく生き残るために相手の駒を虱潰しにし始めたのです。
 この現象により、DM側も陣取りゲームをする意義が失われました。陣を守る必要がなくなったプレイヤー側が固まってモンスターを潰すことに専念するのですから、DM側の戦術も単純な戦力投入しかなくなります。
 
 かくして、1人1キャラという前提に無制限の防御判定、集結と各個撃破という戦法によってTRPGは「陣取り」という大目標を失い、結果として戦術ゲームから戦闘ゲームへと一歩微視的な立場で楽しむゲームへと変化していきました。

 さらにキャラの性能を表現すべく発明された「数値修正」によって、TRPGはMWGから完全に逸脱した新しいゲームと変貌していくのです。そこから先は「気が向けば」次回。
ラベル:TRPG D&D MWG
posted by 回転翼 at 09:01 | TrackBack(1) | TRPG雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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[テーマ]ミニチュアウォーゲームからTRPGになるまでの間にあったゲーム要素の転換
Excerpt: RPGコラム 『うがつもの』: ミニチュアウォーゲームからTRPGになるまでの間にあったゲーム要素の転換 RPGコラム 『うがつもの』: GMは娯楽文化としての立場のために負けなければ
Weblog: きまぐれTRPGニュース
Tracked: 2008-08-02 18:03
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