2009年02月22日

飛行機から空を飛びたい発想を知る 〜日米ロールプレイの出発点〜

 今日はこの記事から。

 TRPG議論のルールブック/読む価値のあるロールプレイ論まとめ(G&G, Inc. blog)
 
 改めて読むと、ロールプレイ論は往々にして迂遠です。
 本来ならTRPGというゲームを遊ぶために必要な情報であるはずのロールプレイ論なのに、あたかも人類がロールプレイを行うに至った社会的行動原理を解明するかのような壮大な論文になってしまっています。

 はたして、本当にゲームするのに必要な情報なのって首を捻ってしまいます。もちろん、TRPGの遊び手が総じてこんなロールプレイ論の学徒であるわけではありません。むしろ圧倒的少数。

 そんなわけで、今日はなぜロールプレイ論はTRPGの現場から遊離して学問化してしまったのかという話。

◆◆◆

 そもそも新型MWGの合間にゲーム世界を肴に歓談していたのがファンタジー文学好きに受けて、いつしか「ゲームで作る伝承物語」の形となって様式化したのがロールプレイだと、TRPG黎明期の変遷を研究した僕は考えています。
 要するに、TRPGは最初からロールプレイを前提としたゲームではなく、ゲーム内歓談がゲーム活動の中で物語を作るという目的を持ちゲーム化されたのがロールプレイであるのです。そこから僕は、ロールプレイはあくまでもゲームプレイの中から生まれたゲームシステムの一種として認識するに至りました。

 だが、馬場秀和氏や俵ねずみ氏がロールプレイ論を論じていた時点では、ロールプレイはまたルーツ不明な舶来文化であり、遊び手は輸入されたゲームシステムを言われるがままにプレイしていました。誰もMWGで発生した歓談からロールプレイに至るまでの変遷を体感していないまま、試行錯誤なき完成形のロールプレイを与えられたのです。
 云わば、日本人ゲーマーにはロールプレイの思考プロセスが欠如していたのです。

 これは飛行の欲求を想像し、グライダーから飛行機へと発想を実現してきた欧米文化と、空を飛ぶという発想すらなかったのにいきなり飛行機が輸入された日本人との意識差と一緒です。

 当然ながら、日本人は「なぜロールプレイをするのか」悩むようになります。アメリカでは最初に『指輪物語』があり、物語をゲーム化する方向でプロセスが進みましたが、日本人はゲーム化されたロールプレイの根源を探るというアメリカ人とは逆方向に進みました。
 これはアメリカ人が幾多の形式がある物語をゲームシステムに集約したのに対し、日本人はロールプレイから欧米人の「ロール」「プレイ」に集約された比較文化を果てしなく網羅し解題する方向へと拡散していくことを意味しました。 

 そして医学、心理学、社会学、比較文化論、演劇論などの学問が総動員された日本のロールプレイ論はゲーム活動の枠組を超え、社会文化活動としての役割と意義から説かれる壮大かつ迂遠な性質を帯びるようになりました。まさに「ロールプレイ社会学」です。

 結果として、日本において語られるロールプレイはロールプレイ社会学の研究論であり、ゲームシステムではなくなりました。ロールプレイ論の用途はゲームのためではなく、アカデミズムへの立場からTRPGを研究しようする教養人、ヲタクのために使われるようになりました。

 それが悪いわけではありません。繰り返しますが、日本人ゲーマーはロールプレイに至る思考プロセスが欠如しているのです。物語をしたいという発想なくしてロールプレイを始めた民族なのです。
 ロールプレイから彼ら……ガイギャックスやアーンソンらは一体何がしたかったのか、彼らの根底にはどんな文化が宿っていて、その文化を体感するにはどこまで淵源をたどればよいのか…。暗中模索の中で解題されたのが和製ロールプレイ論なのです。

 次はようやくアーンソンの地点まで戻った道を、彼らが歩んだのと同じように、いかに日本人が語りたい物語をゲーム化していくかのプロセスを進めばよいのです。
 
 飛行機を渡されて、彼らが空を飛びたいと思ったから作ったのだと理解するまでがこれまでの解題の成果でしょう。次は我々も空を眺め、この空を飛びたい、飛んで何がしたいのか発想する番なのです。

◆◆◆

▼参考記事
ミニチュアウォーゲームからTRPGになるまでの間にあったゲーム要素の転換

GMは娯楽文化としての立場のために負けなければならない

なぜドラゴンはTRPGの主役になりえたのか

アーンソンのプレイリポートから 〜TRPGにおけるデザインとしての戦闘と、テクニックとしての物語〜
タグ:TRPG
posted by 回転翼 at 09:01 | TrackBack(1) | TRPG雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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[RPGs]取り急ぎコメント――国内TRPG論のほとんどは、“他分野の”学問にはなっていないし、目指す必要もない件
Excerpt:  回転翼さんのエントリについて、語に致命的な問題があると思いましたので、取り急ぎコメントします。 回転翼,2009,「飛行機から空を飛びたい発想を知る――日米ロールプレイの出発点」(http://u..
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