2006年01月16日

TRPGゲーマーは幼女と同志がお好き 〜既知を求める性質〜

 同じゲームを何年も遊び続けることはできないと僕は思っています。
 ましてや、そのゲームを隅々まで知り尽くし、ほぼ自分の想定内にコントロールできる力量を持っているものなら尚更のことです。
 そして、それ以前にそのゲームに対して「こんなものだろ」と大抵のことが既知だと意識がコンクリートされ、もはやそのゲームが提供する遊びがすべて「定番」だと思えるようになってしまったならば……。

 今日のコラムはTRPGの既知性について。

 発端は隠密突撃隊発行の同人誌、『RPGの壁』からです。
 男性3人、女性2人の初心者に『D&D』のキャラクター作成を各種図表を用いて丁寧に解説した。RPGの心得がなかった女性2人は虚心坦懐の境地で作成を楽しんだ。だが、すでにルールブックを読んでいた男性3人は「そんなことは知っている」と不快感を露にした。
 『RPGの壁』では、この例を踏まえて浅学から来る情報の遮断が、TRPGへの理解や面白さの発見を妨げていると指摘しています。

 おそらく、この男性たちは女性らを心底軽蔑したことでしょう。
 「メス猿がTRPGに触れてはしゃいでやがる…」といった具合に。

 耳学問というのはこういう青二才を生み出すものです。
 傍から聞けば、楽しむ機会を捨てた男性たちは愚かな連中です。
 だが、いざ自分が初心者の状態で新しいTRPGに挑まんとする時、あなたは徒手空拳で臨むのでしょうか。それとも、なるべく予習をして心得ありという面を見せたいものでしょうか。

 なかなか徒手空拳ではいかれないと思います。
 とみに男性プレイヤーは。

 TRPGにおける男性と女性への捉われ方の差異として博識があります。
 うがってしまえば、東西南北どこでも「貴重な存在」と祭り上げられている女性プレイヤーに対して出自や学識を問うことはしません。女性であれば、無学でも無知でも尊ぶのがTRPGゲーマーというもの。むしろ何も知らない女性初心者が新しい遊びに無邪気に取り組んでいるのを、美少女育成ゲームをプレイしているかの心地で「ああ素晴らしい」と酔いしれている熟練者・上級者・オピニオンリーダーは捨てるほどいます。

 もちろん、そんな熟練者どもは強烈な女性差別主義者です。
 こいつら腹の中では、女性ゲーマーが「初々しい未熟な世間知らずの少女」であるべきなのだという差別意識が根付いています。ゲーマーとして自立させる方向には絶対持っていかない。上級者にはせず、永遠に可愛い初心者であり続けてほしいと願っているのです。
 どんなに人格者ぶっても、セックス・シンボルとして女性を見てるようじゃ豚野郎でしかありません。

 それとは対照的に、男性プレイヤーは碩学ぶりがよく問われます。
 大学生・大学院生・大学ウン年生が多い背景が影響しているのか、教養人のプライドを引っさげて参加しているゲーマーはTRPG業界にはとても多い。ゲームに対する予習は当たり前で、プレイ以前に要領を掴んでいない奴はバカである。ルールブックを読め、リプレイを読め、小説や映画を見てイメージ掴んでから参加してこいという気風が根強くあります。

 永遠に未熟なセックス・シンボルであり、自らは優しいお兄さんでありたいという……自分の美しい側面だけを見てて欲しいという女性への態度とは違い、男性プレイヤーに対しては自分の暗部……マニアックな側面ですら毛嫌いせず交友を持てる「同志」を持ちたいという態度が碩学ぶりを問う気風の背景にあります。
 
 下世話に言えば、同姓だから猥談もできる。
 同姓だから「それもありかも」と言ってくれる。
 だから同姓の友達は自分の話が分かってくれるような奴を選びたい。
 そして自分はマニアックだから、相手もマニアックな話についていけるくらい碩学の人であってほしいな……てな感じ。
 
 もはやTRPGのプレイはTRPGを理解する勉強ではなく、TRPGを勉強した後に挑む試験なのです。初プレイの初心者であっても、初心者としての模範プレイが試されるテストである。テストに質問は不要。解答することが大事である……。
 これがTRPGの初心者男性に向けられた上級者の要望なのです。上級者は嘗め回すように、自らの同調者を探しているのです。
 上級者がそういう「選別」をしている以上、男性初心者としても無知蒙昧であっては無事では済みません。うっかり初々しさを見せたら、同志になるほど同調はせんと判断した上級者によってたちまち村八分に遭います。

 『RPGの壁』でも、別の項にて『ダブルクロス』の初心者講習会で、初版と2版を見せて「両者の違いを言え」と問うた所、「絵が違います」という回答され激しく憤っています。そんなお粗末な物の見方でどうする、そんな初心者には教える気がなくなる……と。

 きっとこの項は、最初に引用した項でキャラ作成を「すでに知っている」と断じた男性初心者が書いたものに違いありません。ある項では浅学からくる情報の遮断を批判したのに、後ろの項では「初版と2版の違い」という浅学により、自らが「付き合えない」と壁を作っているのだから、同一人物だったら皮肉としか言いようがありません

 明らかに、お粗末な質問をした著者の蒙昧です。
 初心者というなら、初版と2版どころか『ダブルクロス』と『アルシャード』(表紙の絵師さんが同じ)の違いすら明朗に答えることはできないでしょう。違いを見出すどころか、違いがあるということすらまだ知らない。知らないどころか、まだ興味が具体的ではない。
 まだ漠然とした「TRPGというゲーム」に引かれてやってきたズブであるのかもしれない。
 そこまで「初心者」というものを掘り下げずに、「初心者であろうとルールブックを渡せば差異を見出すくらいにはモチベーションがあるはず」などという「常識」を勝手に妄想したのが悪い。

 TRPGの初心者教育ってのは苦労がつき物ですけど、教える側が初心を忘れないってのは基本中の基本だと思います。初心者がどの段階に立っているのか……モチベーションはどれくらいあるか、前知識はどれくらいか、緊張はどうなのか……、 まず「違いに気付くことはいいことなのだよ」と意識を持たせ、そして違いに気付かせ、よき方向へと導いていくのが初心者教育の本道ではないでしょうか。

 その意味では、上級者・初心者問わず「既知」であることを前提としたTRPGの仕組みは必ずしも光……同志を得る喜び……だけを出してくれるとは云えません。人と人との温度差を見失う影があります。
 
 だが、それならばTRPGは無知でも構わないかと云えば違います。
 既知の反対は無知ではなく「未知」です。TRPGにはプレイ前は未知でなくてはならない領域というものがあるのです。限定された「知らない」であり、それはプレイによって止揚される性質のものです。
 それに関してはいずれまた。
 
posted by 回転翼 at 09:01 | TrackBack(2) | TRPG雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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