2009年09月12日

種明かしセッションは憂鬱だ 〜GMによる手作りTRPG内AVGの問題点〜

 TRPGのアドベンチャーパートは選択肢のないゲームブックみたいなものです。
 スタートとなる依頼のシーンから始まり、ゴールとなるクライマックスの種明かしで終わりますが、GMによっては途中の道筋がまったく立っておらず、とにかくプレイヤーがシナリオ展開に必要なキーワードを思い浮かべるまで、当てもなく街をさまよう展開になることもままあります。

 物語の展開方法がシステム化されていないTRPGでは各GMがハンドメイドでAVGを作ってくるものですが、大抵が家庭用ゲーム機の推理AVGの手法に近いものが用意されるものです。
 すなわち、

・依頼者の元に集められる。パーティが置かれた現在の立場を確認し、事件の存在を告げられる。パーティの行動範囲が定められ、漠然とした目標が提示される。
 
 ↓

・事件の現場に行く。事件の概略を示すキーワードが提示される。

 ↓

・プレイヤーはキーワードから、シナリオを展開させる新たなキーワードがある場所を推理する。捜査がキーワードに合致すれば、GMは新たなキーワードを与える。
 キーワードに合致しない推理は無駄骨となる。

 ↓

・パーティがクライマックスに到達できるだけのキーワードを獲得していると判断したら、パーティの了承を得てクライマックスに入る。GMはここで事件の全容を種明かしする。

 ↓

・パーティがクライマックスをクリアしたらエンディングに入る。ここでパーティが獲得できなかったキーワードが提示され、GMは全ての真相を明らかにする。

 ……という展開です。
 要は「GMが考えたキーワードがどうすれば得られるのかひたすら推理する」のがTRPG内のAVGです。重要なのは、実際に行動するのはプレイヤーとは違った人格を持つキャラクターであるというゲーム上、キーワード自体の推理は目星に過ぎないってことです。

 例えば、殺人事件の捜査で犯人はナントカ氏だとプレイヤーが推理したとします。だが、それが真実だとしてもシナリオは何の展開もしません。プレイヤーが「キャラクターはどこをどの手段で捜査すれば、ナントカ氏が犯人であるというキーワードを見つけ出せるのか」を推理し、それが有効手であるとGMが判断してはじめてシナリオが展開します。
 すなわち、

・キーワード自体の推理
・キーワードを得られる場所の推理
・キャラクターがキーワードを得られる手段の推理
・キャラクターがキーワードをある場所に行き、得るための手段を講じるための的確なロールプレイの考案とGMへの説得

 ……の4つの推理、説得を成功させてはじめてGMは物語を展開するためにダイスを振る許可を与えてくれるのです。

 TRPGはキャラクターを操るロールプレイを楽しむゲームですから、遊び手同士の知恵比べよりキャラクターを操作する楽しさの方が常に優先されます。上述の難しいキーワード探しも、プレイヤーが推理するのではなく、キャラクターが物語世界の中で推理に勤しむ光景を楽しむのがゲーム活動の目的であるがための手段です。

 こうして理念はあるし、およそよくいるGMが用意してくるAVGの展開も、大体の常道は上述の通りにあります。ただ、それがうまく機能しているとは限りません。
 むしろ、「ロールプレイができなかったらどうする」という問題をうまく解決できないGMは多くいます。上述の4段階思考法はこの記事をまめとるために僕が急遽考えたものであり、問題を抱えるGMの多くはこうした思考法に無頓着です。

 TRPGはロールプレイをするゲームですから、キーワードさえ与えればプレイヤーは自ずとキャラクターを操作してキーワードを得られる場所や手段を特定し、見事なロールプレイをしてくれるだろうという期待はGMとして当然抱く感情です。
 ただ、それには難しい思考法を習得してはじめて可能になります。
 ロールプレイというキャラクターの操作方法に習熟する必要もあれば、その操作に不自然がないようGMを説得する論理力も要求されます。
 ゲーム世界でのキャラクターの「可能・不可能」、「常識的・非常識」に関して深い理解があり、あくまでもキャラクターが理にかなった行動を取ったようロールプレイをしなければ、ゲーム世界の提供者であるGMを満足させることはできないでしょう。
 ロールプレイを楽しむTRPGたるもの、遊び手は良きゲーム世界の再現者でならなければならないし、少なくともそのゲームが好きだと自認している人はそう振る舞うことを喜びとします。

 この「TRPGの遊び手はロールプレイをしてゲーム世界を再現する」という考えが行き過ぎると、まず的確なロールプレイをしなければ、キーワードすら提示しないという、推理の機会すら奪う暴挙をしでかすGMが出てきます。
 
 事件現場に向かって、プレイヤーがすることは「キーワードを得るにふさわしい的確なロールプレイをする」ことであり、これがGMの意に適していなければ、何の情報も与えないこともあります。GMとしてはプレイヤーは的確なロールプレイをあれこれしてくれるものと期待していますから、意に介さないロールプレイを「はずれ」としても問題を感じないのです。

 だが、上述の通りロールプレイは難しい思考法が必要なのです。
 そんなに器用にできる人などそうそういません。
 どんなゲームだって、その世界での「可能・不可能」、「常識的・非常識」の領分などルールブックを読んだだけでは理解できるものではなく、十分に経験を積んだ一部の古強者だけが悟れる境地です。

 普通のファンタジー世界でも、街の裏事情を調べるにはまず盗賊ギルドを発想し、そこが該当する裏事情に精通しているかを考え、それがどこにあって、PCが問題なく接触するにはどうような手段をとればいいのか……これらのことを咄嗟に思いついて説得できなければ、GMは判定の機会すら与えてはくれませんでしょう。

 大抵がやっとのことで1つか2つアイディアを出して、それが通用するか恐る恐るGMに打診するのが精一杯。それが無効手だと判断されれば、もうプレイヤーは途方に暮れるしかありません。

 下手なGMはこうして何度もプレイヤーに自分の意に適わぬロールプレイをさせては途方に暮れさせて、セッションが停滞したので渋々と強制展開をしてはキーワードを種明かしし、釈然としないまま戦闘でお茶を濁すものです。

 『シルバーレインRPG』サプリメント、『メガリスクライシス』には拡張ルールとして、偶然の力で物語を展開させるリール判定があり、『まじしゃんず・あかでみぃRPG』には行き詰まった時に強制展開させるカオスチャートなるデータがあります。
 これらのシステム、データはシナリオに行き詰まった場合の救済処置なのですが、これらのシナリオが生まれたこと自体が、TRPG内AVGの最大の問題が行き詰まりにあることを浮き彫りにしているのではないでしょうか。
 少なくとも、僕は行き詰まり救済システムは使ったら負けかなと思っています。

 こんな僕ですから、プレイヤーが何1つ自力で物語を展開させることができず、GMが終始種明かしをして進むセッションは憂鬱でしかないのです。
 GMが思い描いた物語を忠実に再現することだけがロールプレイではないというのに……。

 かく言う僕も、今の今までそうしたプレイヤーにキーワード探しをさせるシナリオばかり書いてきたわけで、他人を叱るよりまず自分を改善したくて仕方がありません。
 つーか、それが当たり前だと思っていて、自分の目指すセッションと摩擦が起こったので初めておかしいと感じたわけでして……。

 僕はシナリオ展開の主導権はプレイヤーにあり、ロールプレイはプレイヤーが物語を自分好みに書き換えるための道具であってほしいと常々思っています。
 海賊を討伐するシナリオで、海賊船を乗っ取って自らが海賊になってもよいとするのがTRPGの自由です。それを実現するためにも、GMに主導権がありすぎる現行のTRPG内AVGの常道を再検討すべきなのではと考えています。
タグ:TRPG
posted by 回転翼 at 09:01 | TrackBack(2) | TRPG雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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