2008年03月03日

外に語る時代ではなくなった 〜TRPGブロガーがアニメ版ナイトウィザードに冷淡だった一因〜

 昨年10月〜12月にかけてTVアニメ『ナイトウィザード The ANIMATION』が放送され、ロードス以来のTRPG原作アニメということで僕もその動向を注視していました。やはり原作設定の多いTRPGと云う媒介を1クールで説明しきるのは至難の技でしたが、頭を抱えるほどの逸脱や作画崩壊(OPを含め何度かハラハラしたけど)もなく、まぁまず無難に終えた感はあります。

 TRPG愛好家の間では久々の露出にさぞ湧き上がっているかと思いきや、意外と冷淡です。放送時に合わせて、『ナイトウィザード 2nd Rdition』が発売されたのですが、そんなに騒ぐほど話題になったというほどではありません。
 ナイトウィザード愛好家の元に行けば、それなりの熱い盛り上がりを体感できたかと思いますが、それでないごく普通にTRPGをプレイしている環境では、正直アニメ版は別次元の話でした。

 様々な諸因はあるでしょうけど、アニメ化がTRPGの販売促進に繋がったかは正直微妙ではないかと思います。結論を出すにはまだ早いのでしょうけど、ナイトウィザードで活動している方々の実感も聞いてみたい所です。

 そんなわけで、今日はTRPG愛好者が外部露出に冷淡になったのかを問い、その諸因の1つを推察します。

◆◆◆

 かつて『ロードス島戦記』が世に出て、TRPGの存在が知れ渡った時代、日本においてTRPGの背景たる西洋ファンタジー自体が認知されておらず、TRPGは新しいゲームであると同時に、新しい物語文化の伝道者としての役目を求められていました。そもそも、当時はゲームに小説のような物語が織り込まれ、ゲーム中に物語られること自体が異質の存在でした。

 すなわち、当時のTRPG愛好者は世間一般の人より物語世界のイメージが豊富であり、イメージ格差の是正をするために盛んに外部に自分たちの文化を語る必要がありました。
 この時代、TRPGは紛れもなく文化の発信者でした。TRPGは物語世界の文化では最先端技術でもあったのです。

 翻って現在では、映画、漫画、アニメ、小説、そしてゲームと物語文化を演出するメディアは多種多様になり、またインターネットの登場によって文化の伝播が格段と容易になりました。これによって、TRPG愛好者はゲームを紹介するのに一々物語世界を解説する手間から解放されました。チェインメイルが何なのか、ゴブリンとはどんな生き物なのか、十分にイメージがついてから参加してくる人が多くなり、それ以前にゲームを遊ぶのに物語世界を把握する必要性が認知されるようになりました。

 現在では、TRPG以外のメディアに精通し、TRPG愛好者よりも物語世界のイメージが豊富な人など、それこそ市場を成すほどいるでしょう。ある物語文化を楽しむにTRPGは文字(小説)、ヴィジュアル(視覚メディア)、コミュニケーション(オンライン)のどれもアンティークな存在になり、「物語文化の体験」というかってはTRPGが最先端技術だった時代は趣味文化の多様化によって拡散されるようになりました。物語文化を体感するに、TRPGは最先端から選択肢の1つに成り下がりました。

 今の時代、物語文化の最先端技術の座を降りたTRPGは逆に文化の受信者となっています。むしろTRPGの方が他メディアの影響を受け、流行のメディアを再現するようアンテナを張ることが求められています。
 TRPGが外部発信から内部受信の文化になった時期はおそらく、冬の時代と呼ばれた2000年前後と、F.E.A.R社が旗手となって現在のスタイルが新生された2005年頃の間、5年の間かと思います。

 TRPG系BlogはTRPGを知らぬ外部に宣伝活動をするよりも、TRPG愛好者の間で啓蒙活動をするBlogの方が多くあります。僕のBlogもその走りであるわけですけど、要するにBlogを開くほど発言に意欲のあるゲーマーの興味が外よりも内に向いているということです。
 これは当然の事で、TRPG系ブロガーと云えども数ある趣味の中にTRPGがあるに過ぎず、異文化の良さを十分知っているからです。趣味文化が多様化し、それぞれが認知され住み分けられるほど成熟した日本では、それぞれの趣味が市民権を持ちやすく、「○○こそ優れている。××はダメ」という文句がつけづらくなっています。
 今の時代、TRPGが優れた文化であることを宣伝しても、より市場が広く熟練した見識者がいる他メディアによって返り討ちに遭うことは目に見えています。

 TRPGの良さを外部に伝える必要性を感じるのは、趣味文化が多種多様になった現在では簡単なことではないのです。趣味文化が未成熟な時代は、それぞれの井戸の中で、俺たちの趣味こそ天下一と主張し合うことこそが趣味人の在り方でした。それぞれの趣味文化が今よりずっと閉鎖環境にあったからです。その不便さから、外に向かう言葉が必要だったのです。
 だが、それぞれの趣味が独自に発展し、それらがインターネットによって容易く伝播し合える現代では趣味を持つに閉鎖環境に置かれることはなく、いつでも外の世界を窺い知ることができます。そんな開かれた世界になった時代に、TRPGこそ優れた趣味だと訴えた所で、すぐ他の世界と見比べることが可能なのです。

 こんな時代ですから、TRPGが他メディアに物語を提供した所で、TRPGがアニメ業界に貢献した、TRPGはアニメ業界に恩を売った、アニメ業界はTRPG様の善意によって優れた作品を得たなどと思う人は誰もいません。いわんや、アニメ業界に御恩を与えたのだから、アニメ業界からは恩に報いるべく参入者が来て当然ではないかと考える者は今や妄動の徒と云えましょう。
 
 TRPGはTRPG、アニメはアニメと趣味の世界はそれぞれに成熟し別次元で住み分けられているのが現在なのです。それが分かっているからこその冷淡ぶりなのでしょう。
posted by 回転翼 at 09:01 | TrackBack(0) | TRPG雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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