色々と「ああ、こうなっちゃったんだね…」と思うことはありますが、システムのバランスがとてもよいということなので、とりあえず掴みは良好のようです。
そんなわけで、今日はなぜソードワールドが廃れなかったかという話。
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旧作『ソードワールドRPG(SW)』は思えば不思議な作品でした。
『パワープレイ(PP)』と同様、TRPGがまだウォーゲームの派生として、ウォーゲームの合間にファンタジー物語を語り合うという和製『D&D』を求めていた頃の作品であり、『バトルテック』を参考にした独自のシステムは非ウォーゲーマーから見れば些かマニアックであり、TRPGとして決して分かりやすいシステムではありませんでした。
僕が高校生だった頃は『ロードス島戦記RPG』や『ブルーフォレスト物語』などより簡潔なシステムがあり、SWは『D&D』ほどマニアックではないが、サークルでもそれなりに技能を磨いた玄人が好んでいたという印象があります。
さすれば、僕がPPに対して断じたように、和製『D&D』の存在意義が物語メディアの発達によって薄れた時期に合わせて、SWの使命は終わったと断ずる人が出てきてもおかしくはありません。
曰く、SWはシステムも、牧歌的な冒険者物語(デザインコンセプト)も研究され、表現され尽くした感があり飽きてきた。よりバランスが取れ現在のトラブルに対処した清新なシステム、最新のファンタジー物語に合わせたハイセンスなデザインコンセプトに基づいた設定がなされたゲームが登場すれば、SWは自ずとスタンダードTRPGという大仰な看板を下ろし使命を終わるであろう……。
TRPGサイクルの否定期によくある批判をSWも受けました。
事実、96年にハードカバー版『ソードワールドRPG完全版』が出版されましたが、08年現在でもSWと云ったら旧来の文庫版を示す人の方が多いのが現実です。完全版は累積した用語の整理やバランス調整など文庫版より完成度の高いシステムだったはずなのですが、文庫版より低い評価に留まっています。
同じSNEのゲームとして前年に出た『クリスタニアRPG』の方にファンが傾倒したのが主たる理由でしたが、95年の『トーキョーN◎VA the 2nd edition』、96年の『熱血専用!!』、『天羅万象』、97年の『深淵』、『番長学園RPG』とロールプレイの妙を楽しむ濃厚なデザインのゲームが露出してきた時代であり、SWの寡占状態だったプレイ環境に割り入ってきたというのもあります。
僕が一旦リタイアした2000年前後までの間に、SWは爛熟期から否定期に差し掛かり、代わりに初期F.E.A.R社の人気タイトルが隆盛期に入ってきました。
少なくとも、都会では。
そしてTRPG冬の時代も過ぎ、インターネット環境が発達して趣味文化の多くが「多くある興味を引くものの1つ」になった現在、使命を終えたはずのSWはまだしぶとく現役でい続けていました。それも文庫版の方が、です。
そして今年、『ソードワールドRPG2.0(SW2.0)』としての再生…。
TRPG系Blog界隈はかってない反響を以てこの再生を迎えました。
同じ和製D&Dを目指したPPとの差、これは何でしょう。
僕はSWにはシステムの清新さというゲーマーの視点だけでは語りきれないブランド価値が備わっており、それがSWを不朽にしたと考えます。
SW最大の武器は文庫版だったことです。
TRPGを入手する場所に事欠かない都会ゲーマーには想像し難いことですが、地方のゲーマーにとってSWは注文しなくとも買える可能性がある唯一のTRPGでした。僕もまた都会ゲーマーなので、これに関してはうまく説明できないでしょう。そこは地方のゲーマー諸兄にお任せします。
だが、実の所入手しやすさはSWにとって最重要なメリットではありません。ここから先は都会も地方も一緒です。
SWが文庫本であることで、TRPGの遊び手は始めて自分のライフスタイルの中にTRPGを組み込むことが可能になった……これがSWが持つ最大の功績です。
それまでTRPGと云えばボックスであったりA4サイズの巨大ムックであったりと、日常生活の中で広げるには抵抗のある「プロの道具」でした。趣味の道具とは云えTRPGは文字の集合体たる書籍…、読書感覚でTRPGに触れることができればどれだけ気軽であろうか…。
SWが出て、始めてTRPGの遊び手は電車の中や喫茶店で、気兼ねなくルールブックを開くことができるようになったのです。実社会の中で堂々と自分の趣味を開陳できるという喜びは多くの遊び手にモチベーションを与え、業界を活性化させる効果があったのです。
その意味では、TRPGのライフスタイル化への可能性を開いた『T&T』の功績も忘れてはならないでしょう。
ゲーム総合情報誌やライトノベル誌に登場したリプレイはTRPGの知名度に貢献しましたが、コンシューマーゲーマーやラノベ愛好者がすんなりTRPGに入ってきたのも、SWが彼らの趣味文化に何か特別な変化をもたらすことなく参加できるような土壌を作ったからでしょう。SWはコンシューマーゲームやラノベの世界とTRPGの世界とを繋ぐ橋としては見事な形態であったと云えます。これが『D&D』だったらこんなにすんなりいかなかったでしょう。
ここまで来て、SW完全版がなぜ文和版よりも完成度が高いのに評価が低いのかお分かりいただけたかと思います。あのぶ厚いムック版は遊び手のライフスタイルに組み込むには大仰すぎたのです。
文庫版と云えば『D&D』も一時期文庫版が出版されましたが結果は総スカンでした。D&Dは当初からコアな志向を持つマニア愛好の品であり、システムも情報もTRPGの中の高級品です。云わば文庫版D&Dは持つのも恥ずかしい廉価版なのです。何でも文庫にすれば売れるわけではないのです。
文庫版TRPGは日常のライフスタイルに入り込める作品だけが成功する形式であり、SWはゲーム誌やラノベに好奇心や娯楽を求める人たちが日常に組み込んでいるライフスタイルの中に溶け込むことでブランドを得ました。
到底、TRPG一徹者やシュミレーションゲーム流れには気付きもしないことです。
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さて、2008年現在、文庫版TRPGは『アリアンロッドRPG』や『アルシャード・ガイア』があり、SW2.0はそれら先発と同じ市場を奪い合うという意見もあります。
だが、それ以上に奪い合いになる真のライバルがいます。
云うまでもなく、旧版たる『ソードワールドRPG』です。ブルーレイがHDDVDとの競争に勝ち、現在は現在主流のDVDとのシェア争いが予測されるのと同様に、SW2.0もSWが築いているシェアをどれだけ奪えるかが勝負となりましょう。






